自宅診療が大事だと思った理由①
今回は、私がなぜ自宅診療が大事だと思ったのかを書いてみたい。
私は現在40歳なのだが、新卒で会社に入ってからは、体調不良に対しては敏感で、人にうつしてしまう感染症ではないことを確認するのをルール化していた。
私なりのプロ意識だったわけだ。
それが2年ほど前にこれを覆したくなることが起きた。
ある日、発熱、喉の痛み、咳の症状が出て、近所の病院に行った時のことだった。
その時は、咳が今まで経験した中で一番ひどくて少し心配した気持ちだった。
病院は混雑していて、40分ほど待ちようやく診察となった。
医師から「どうしました?」と聞かれ症状を伝えたが、あまり聞いていない様子。
医師が「はい、胸出して」と言った後、聴診器をあて、その後喉を見る。
全体的に、医師の診察の仕方が、これまでの他の医師に比べて「雑だな」という印象を持った。
医師「風邪なんじゃないかな?薬飲んで2~3日安静にしておいて」
私「あの、もう少し具体的にどういう状態か教えてもらえませんか」
医師「普通の風邪ですね。お大事にしてください。」
私「。。。」
医師の態度もめんどくさそうだったので、これで会話は終わった。
なんて適当な対応なんだ!!!
40分待ってこんな対応なんてありえない!!!
無性に腹が立ったが、それと同時にこんな考えが頭に浮かんだ。
これぐらいの診察なら、自分で勉強すればある程度できるのでは?
そもそもこんなにも多くの医師がいれば、勉強熱心で優秀な医師、そこそこ普通に対応する医師、流れ作業をこなすだけの医師など、いろんな人がいて当然だ。
もちろん優秀な医師になろうなんて思わないが、素人がそこそこ勉強すれば、少なくても病院に行った方がいいのか、風邪だから安静にしておけばいいかの区別をある程度つけるぐらいできるんじゃないか。
そう思ったら、これまで1㎜も興味がなかった、診療ということにめちゃくちゃ興味が湧いてきた。
しかも、本当にそんなことができて、自分以外にも風邪かどうかの最低限の区分けができれば、病院に来る人を減らし、待ち時間を短くすることにも貢献できる。
そんな思いで、できるだけ専門用語が少なくて、私のニーズに合いそうな書籍を探した。
そんな中で出会ったのが
誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 感染症診療12の戦略
この本が、自分が探していた内容に一番近いと思った。
だけど、これはあくまで医師向けに書かれた書籍で、専門用語がたくさん出てきて素人が読み進めるにはハードルが高い。
だから、もう少し素人目線で伝えられたらな、と思ったのが、このブログなのだ。
熱と首の痛みがセットで出たら
今回は熱とセットで首の痛みが出た場合を見てみよう。
最も多いのは風邪の延長線上で首の前側にあるリンパ節がはれているという症状だ。
風邪の延長線上かどうかを確認するには、唾を飲み込んでみよう。
唾を飲みこんでいたいのは、咽頭と呼ばれる鼻から食堂につながる部分が炎症を起こしているためで、「喉の痛みが主な症状だったら」の時と同じ対処でOKだ。
とはいえ、首の前側にはれがあった場合でも、リンパ節のはれなのかどうかを判断するのは難しいだろう。
実は、これは病院でもわかりにくいという側面もある。
はじめてこの症状が出た場合は、病院に行った方がいいだろう。
もし過去にリンパ節がはれる症状を経験している場合は、同じ症状かどうかを確認すればよいということになる。
ちなみに、リンパ節は鎖骨上や後頭部にも存在する。
そしてこれらがはれた場合は、何らかの異常の症状である可能性が高いので、症状の重さに関わらず病院を受診しよう。
また、首以外にも全身のリンパ節がはれていると疑われる場合も、同様に病院に行こう。
それから、首に痛みがあるのに、特に首にはれがない場合も、すぐに病院を受診したい。
以上のように、首に痛みがある場合は、唾を飲みこんで痛みがあり、風邪の延長線上と想定される場合以外は、病院を受診するというのが基本対処と考えていいだろう。
熱と皮膚症状(かゆみ、はれなど)がセットで出たら
今回は、熱とともに皮膚にかゆみやはれなどの何らかの症状(以下、皮膚症状)が出た場合を考えてみる。
この場合は基本的に病院に行くと考えていいだろう。
皮膚症状には大きく、ある特定の部位のみで症状が出る局所型と、全身に症状が出る全身型の2つのタイプにわけられる。
局所型については、以下のような種類がある。
・手のひら化足の裏の皮膚:手足口病か梅毒
※梅毒の疑いは、性交渉歴をチェックする。
・水疱ができていて、世の中で水痘の流行がある:成人水痘
・淡い赤の斑点があり耳の後ろのリンパがはれている:風しん
・急に手足がむくんで、なんとなく身体がかゆい:リンゴ病
・赤い点々が広がり、患部を押すと痛みを感じる(部位はどこでも):蜂窩織炎
全身型については、病院でも診断が難しいのが実態。
今の流行感染症と接触歴などにより診断を進めていくことになるだろう。
いずれにしても、このパターンは病院に行く、と覚えておけばいい。
熱と節々の痛み(関節痛)がセットで出たら
熱が出たときに、よく関節の痛みの症状が出ることがある。
「節々が痛い」という表現で用いられることが多い状態だ。
この関節の痛みを、以下では関節痛と呼ぶことにする。
関節痛は、基本的には典型的な風邪における熱に伴って出る症状と考えてよい。
このため、このブログでお伝えしている通り、咳、鼻水、喉の痛みといった、典型的な風邪症状があるのであれば、風邪+αの症状と考えてOKだ。
逆に、風邪の症状がないのに関節痛がきたら要注意。
この場合に疑うのがインフルエンザの感染だ。特にインフルエンザが流行しているときにこの症状が出たら可能性が高くなる。
また、関節痛がひどくなり関節炎という状態になると、痛み以外にも赤くはれたり、はれた部位をうまく動かせないといったことが起きうる。
この場合は、パルボウイルスや風疹にかかっている可能性も考えられる。
ちなみに関節炎の部位が1カ所だと痛風、2カ所以上だとパルボウイルスや風疹に可能性が高いのだが、これ以外の場合もあるのであまり深く考えなくてよい。
とにかく、あまり難しく考えずに、痛みがある部位が「はれているな」と感じたら、病院へ行くと考えよう。
熱と消化器症状(下痢、腹痛、嘔吐など)がセットで出たら
熱と一緒に下痢、腹痛、嘔吐などの消化器官における症状(以下、消化器症状)が出た場合を考えてみよう。
この消火器症状が出る原因は、基本的に「腸炎」だ。
これはいわゆるお腹の風邪と考えればよく、治療の必要はなく自然治癒する。
まれに細菌性腸炎になっている場合もある。
ただ細菌性の場合も、特に治療の必要のないものがほとんどと考えてよい。
このウイルス性腸炎と細菌性腸炎が原因であることがほとんどなのだが、まれに胃腸炎になっている場合がある。
胃腸炎にもウイルス性のもの、細菌性のものがあり、両者とも多くは自然と治る。
ただ、細菌性胃腸炎だった場合については、脱水などの症状が起きる場合がある。
実は、病院でもウイルス性か細菌性かを見分けるのは難しい。
だから、大事にすべきことはウイルス性か細菌性かを見分けることではなく、
①症状が強いかどうか
②ハイリスクな基礎疾患を持っているかどうか
③家族や友人などの身近な人に胃腸炎に感染している人がいないか
の3つを確認することだ。
症状が強いかどうかの見極めは、
・脱水症状が起きていないか
・子供がぐったりしていないか
・飲んだり、食べたりできないことはないか
の3つをチェックすればいいだろう。
①~③の症状に当てはまりそうだと思ったら、病院に行こう。
また、まれなケースとして、家畜や野鳥、野生動物の消化管に存在しているカンピロバクターと呼ばれる細菌によるカンピロバクター腸炎になることもある。
熱が2~3日続いた後に、消化器症状が出るようならカンピロバクター腸炎を疑い、病院に行こう。
熱と頭痛の症状がセットで出たら
今回は、熱と頭痛の症状がセットで出た場合を考える。
この場合は、さらに咳、鼻水、喉の痛みなどのいわゆる風邪の症状が出たら、風邪による発熱に伴って頭痛が現れたと考えてよい。
つまりは風邪の症状もあるなら、風邪の延長線上ということだ。
この場合の治療は風邪と同じで良いので、家で安静にしておけば自然によくなるだろう。
ただし、頭痛が激しい場合は要注意。
髄膜炎の可能性がある。
頭痛により、ぐったりしていたり、嘔吐を伴っていたり、意識相ががある場合は、髄膜炎の可能性がかなり高くなる。
激しいの定義が難しいが、今まで感じたことのない激しい頭痛だったら、髄膜炎の可能性を疑うのがよい。
そのほかにも、普段と比べて組が曲げにくいような状態のときも、髄膜炎を疑い病院を受診しよう。
微熱と倦怠感の症状がセットででたら
咳、鼻水、喉の痛みといったいわゆる風邪の症状が出た後で、微熱と倦怠感がセットになってやってくることがある。
誰でも経験がある、よくある話っではないだろうか。
これは基本的に、風邪の続きと考えてよい。専門用語で感冒後疲労という状態だ。
ただし、これはあくまで「風邪の症状が出た後で、微熱と倦怠感がセットできた場合のみ」だ。
特に風邪症状がなく微熱と倦怠感がきたら、実は重大な病気の場合がある。
それが急性肝炎や急性心筋炎だ。
これらは、これがメインの症状だ!というものがいまいちつかめない状態で、強い倦怠感や食欲不振に襲われる。
強い、というのは食事のにおいだけで不快を感じるレベルと考えてよい。
そのほかにも、風邪症状がなく微熱と倦怠感がきた場合には、無痛性甲状腺炎、リウマチ性多発筋痛症、悪性腫瘍などの非感染性疾患や、結核、感染性心内膜炎などの感染症の場合もありうる。
とにかく、微熱と倦怠感がセットでくるパターンについては、事前に咳、鼻水、喉の痛みといった風邪症状があったのかが大事になる。
もしなかったのであれば、すぐに病院を受診しよう。