風邪っぽい+高熱が出ている場合

これまで、風邪の症状である「鼻水」「喉の痛み」「咳」について、それぞれが主な症状だった場合に、病院に行くかをざっくりとどう判断するかを見てきた。

これだけの情報でも、かなり自宅で判断がつくと思われる方が多いのではないだろうか。

実際、私自身も若いころからこれぐらいの情報を知っておけばよかったと今更ながら思っている。

 

では、ここからもう少し掘り下げて、「風邪かも」という症状に紛れ込む風邪ではない病気のパターンを見ていきたい。

 

今回考えたいのは高熱が出るパターンだ。

急な高熱が出て、それ以外の症状がいまいちはっきりしない場合ととらえてOKである。

 

この症状で警戒しなければいけないのは「敗血症」だ。

敗血症は初期の症状が風邪に似ているものの、実は命に関わる重大なものなので見落としNGである。

敗血症であるかどうかのポイントは、ずばりガタガタする震えがあるかどうか。

自分で体の震えを止めようとしても、止められない場合は敗血症の可能性があると考えるべきで、すぐに病院に行って検査を受ける必要があると思ってよいだろう。

 

インフルエンザは似たような症状が出るため、インフルエンザ流行期は病院でも判断が難しい場合があるが、ここは病院にまかせよう。

とにかく風邪っぽくて高熱があり、ガタガタとした震えが来たら病院へ行こう。

 

そのほかにも、成人で高熱(38.5℃以上)が3日以上続くものは、病院に行った方がいい。

インフルエンザ以外にも、アデノ、ヘルペス、麻疹、パルボなどのウイルスに感染している可能性がある。

小児では38.5℃以上は珍しくないが成人ではレアケースととらえて間違いない。

 

また、このような症状が出ている

・高齢者

・基礎疾患がある方

・症状がぐったりするレベルで出ている方

については、肺炎や尿路感染症などの可能性もありうるので、病院を受診しよう。

 

咳が主な症状だったら

今回は、咳が主な症状だった場合を考えてみる。

 

この場合に最も多いのは「気管支炎」。

そして気管支炎のうち90%以上はウイルス性だ。

ウイルス性気管支炎は自然に治る病気と考えてOKなので、病院に行かなくていい。

風邪と同じ判断でOKということだ。

 

気管支炎に似た症状が出る病気に「肺炎」がある。

実は、気管支炎と肺炎は病院でもクリアに区別することが難しい。

よく胸部X線で影があれば肺炎と診断するのだが、全ての患者に胸部X線をすることは手間がかかりすぎる。

また、影が出たとしてそれが明確だと肺炎だと判断することが難しい場合もある。

なので、判断が難しいのだ。

 

では、どうするかというと、明らかに「肺炎」と疑うポイントを把握しておき、これにあてはまれば、病院に行くという判断でいいだろう。

明らかに肺炎を疑うポイントは以下の3つだ。

・寒気を感じでガタガタと震えが止まらず、38℃以上の発熱、咳がある

・38℃以下でも高齢者や肺の基礎疾患がある人で、びっしょりするほど寝汗を書いてしまう

・一度治ったと思ったら、ぶり返したように咳が出た

・喉の痛みや鼻水などの他の症状がない。

 

これらの状況にあてはまれば、肺炎と想定して病院に行こう。

 

これ以外で注意するべきこととしては、

・ガタガタと震えがある時に、インフルエンザが流行している場合は

 インフルエンザと肺炎の合併の場合もありうるので、すぐ病院に行きたい。

 

・重い発作性の咳がでて、睡眠がとれないときは百日咳の可能性あり。

 ただ、百日咳の場合は、症状が出ても2週間は抗菌薬が効かない特徴があり、

 2週間以上症状が改善しない場合は、すぐに病院に行く。

 

・3週間以上咳が続いていたら、結核の可能性あり。

 この場合はすぐに病院に行く。

 

鼻水や喉の痛みの場合と比べ、咳の方が若干複雑である。

ただ、症状が出た場合の多くは風邪か気管支炎で自然治癒するので、慌てずに状況を見ながら、病院に行くか判断すれば大丈夫だ。

 

 

喉の痛みが主な症状だったら

今回は、鼻水や咳よりも喉の痛みが主な症状を考えてみよう。

 

このようなパターンで最初にやることは「唾を飲み込む」ことだ。

唾を飲み込んでいたいと感じたら、鼻から食堂につながる「咽頭」と呼ばれる部分が炎症を起こしている。

この炎症はウイルス性のものがほとんどで、基本は自然に治っていく。

 

このパターンで唯一治療の必要があるのは、溶連菌(溶血性性連鎖球菌)という細菌が引き起こす「A群溶連菌性咽頭炎」と呼ばれる炎症だ。

成人では10%以下と言われるが、咳がなく熱が38℃以上ある場合は、A群溶連菌性咽頭炎の疑いがあるので病院を受診したほうが良い。

咳がないというのがポイントで、溶連菌は細菌だから複数の症状は出ず、喉の痛みのみとなっているはずである。

 

そして、唾を飲んで痛みを感じたとしても、

・口を開けるのもつらい

・苦しくて横になれない

・唾を飲めずに垂らしてしまう

うな重症感があるときも病院を受診しよう。

急性咽頭蓋炎などの重い疾患にかかっている可能性がある。

 

一方で、「唾を飲み込んでも痛くない」場合のことも確認しておこう。

唾を飲みこんでも痛くない時は実は要注意の状態だ。

この時は、病院を受診したほうが良いと考えて問題ない。

 

特に、突然喉が痛くなったという場合は、すぐに病院を受診したい。

心筋梗塞くも膜下出血などの重い疾患の可能性がある。

 

基本的にはこれらの考え方で病院を受診するか判断してもらうと良いと思うが、

流行している病気がある場合は、それに近い症状かどうかも確認したほうが良い。

鼻水が主な症状だったら

前回、風邪の特徴として、咳、鼻水、喉の痛みの3つの症状が同時期に起こるという話をしました。

今回はこのうち「鼻水」が主な症状だったパターンについて深堀したいと思います。

 

まず、鼻水が主な症状だった場合に、見逃して大きな問題になるような病気はありません。

なので、鼻水メインだったら、自然治癒となる可能性が高いと考えてもらってOKと思います。

 

唯一警戒したほうがいいのは、細菌性副鼻腔炎です。

細菌性副鼻腔炎が重症化した場合は、病院での治療が必要になります。

ウイルス性の副鼻腔炎もありますが、細菌性の特徴は咳や喉の痛みなどの他症状がなく、鼻水単体の症状になります。

特に細菌性副鼻腔炎になる場合、最初にウイルスに感染して回復し、その後細菌性副鼻腔炎になる可能性が高いという特徴があります。

風邪っぽいものが数日で回復したのに、再度鼻水の量が増えて38℃以上の熱もあるような状態であれば、2回目は細菌性副鼻腔炎の可能性があります。

 

ただ、細菌性副鼻腔炎は必ず病院に行かないと治らないというものではありません。

自然に回復していくものの方が圧倒的に多いのです。

なので、2回目の症状が重いな、結構長く続くな、と思ったら病院に行くと良いでしょう。

 

病院に行くと抗菌薬を処方されることが多いです。

しかしながら、予防的な抗菌薬などの安易な抗菌薬の服用は、薬剤耐性菌という薬に対抗する菌を体内に作ってしまうことになります。

この場合、いざというときに抗菌薬が効かないという問題が発生する可能性が高いです。

重症でなければ抗菌薬はなしとした方が良いでしょう。

 

 

風邪ってなんだ?病院に行くべき?

風邪をひく。誰でもあることだ。

でも改めて「風邪ってなんだ?」と思う。

そもそも、風邪かな?と思ったときの症状はいつも同じではない。

のどが痛いなと思ったら咳が出てきたり。

逆に咳が出始めたなと思ったら、のどが痛くなってきたり。

なんとなく毎回微妙に違うというのが、多くの人の感想だろう。

 

風邪は「ウイルス性の上気道感染症」のことを指すと言われている。

ウイルスが口や鼻から体内に入り、そこで炎症が起きて咳、喉の痛み、鼻水などの症状を引き起こすのだ。

 

この「ウイルス性の上気道感染症」は、ほとんどの場合が自然に治る

しかも風邪を引き起こすウイルスは200種類以上あると言われていて、そのほとんどが病院では特定できないらしい。

だから、実は、風邪は病院に行く必要がないのだ

 

なるほど、風邪なら病院に行かずに家で安静にしていればいいんだね。

でも知りたいことは、今出ている症状は風邪なのか、ということ。

風邪だってわかっていれば、病院に行かない決断ができるのに。

 

じゃあ風邪の特徴って何なの?

実は風邪の特徴は、咳、鼻水、喉の痛みが同時期に出る症状だ。

同時期といっても2日程度の間に順次症状が出ることも含まれる。

だから、咳、鼻水、喉の痛みなどいろんな症状が出てきたら風邪ととらえるのがいいだろう。

 

そもそも、体調が悪くなる感染症には細菌によるものとウイルスによるものがある。

風邪は「ウイルス性の上気道感染症」だからウイルスによるものだ。

ウイルスによるものは複数の症状を引き起こすのに対し、細菌は症状が1つであることが多い。

なので、いろんな症状が同時期に起きればウイルス性で細菌性でないことがわかる。

逆に1症状のみなら細菌感染している可能性が高いのだ。

 

ウイルス性か細菌性かの見分けはわかったが、ウイルス性なら全て風邪と判断していいの?そんな簡単な話?

もちろん、そんなに簡単ではない。

なので、次回以降は、もう少し風邪の症状について詳しく見ていくことにする。